東京都農林水産技術会議
水産試験研究評価部会報告
 平成13年度第2回東京都農林水産技術会議水産試験研究評価部会が、平成14年3月18日に開催され、平成14年度から新たに開始する3研究テーマに対する評価が行われました。

〔研究評価部会委員〕
部会長 竹内俊郎 東京水産大学資源育成学科 教授
      桜本和美 東京水産大学資源管理学科 助教授
      松里寿彦 独立行政法人水産総合研究センター研究推進部長
      仲村正二郎 東京都漁業協同組合連合会専務理事
      大谷幸雄 東京都内水面漁業協同組合連合会代表理事会長
      三田豊一 東京都内湾漁業対策委員会会長
      酒泉幹雄 都民委員
      鈴木たね子 都民委員                   計8名
1 評価対象研究
 今回、評価の対象となった研究は、下記の表に示した研究テーマ3課題で、平成14年度から開始します。平成13年7月に開かれた第1回の部会で評価された4課題とあわせて合計7課題となります。
研究テーマ 研究部所
(1)八丈島におけるカツオ漁業資源調査
(2)三宅島の火山灰を利用した海藻礁の研究
(3)海洋深層水の利用に向けた調査
八丈分場
大島分場
資源管理部・大島・八丈分場
2 研究テーマごとの評価結果
[研究テーマ](1)八丈島におけるカツオ漁業資源調査
[研究期間] 平成14年度〜平成18年度(5年間)
[研究の目的]全国で行われる「マグロ・カツオ資源調査」と連携して、八丈島海域へ回遊するカツオの来遊量や回遊経路等を明らかにする。漁場位置や来遊予測など的確な漁業・資源情報を漁業者へ提供して、漁獲量や水揚げ金額の安定・向上を目指す。
[研究内容]
1.八丈海域でのカツオ漁獲量など漁業情報を収集して解析する。
2.調査指導船による海洋観測や標識放流調査などから漁場形成要因や回遊経路を探る。
3.ニューラルネットワークなどによる来遊量予測と精度向上を目指す。
4.全国、近県のカツオ漁況情報を収集して管内漁業者へ提供する。
[評  価] 
 回遊性魚類の資源調査は今日的課題としてきわめて重要である。特に、八丈島の水揚げ額の40%以上を占めるカツオ漁業の資源調査を行うことは、安定的な漁業資源の確保を図ることができるとともに、島民のみならず、築地市場に近いこともあり、都民の食材としても有用であり、水産業への貢献度は高い。5年間の研究期間も妥当であるが、他の研究機関との共同体制を進めながら継続的なシステムを構築できるように、5年間で仕上げてほしい。 
[評価に対する対応]
 カツオの水揚げは、資源量以外にも漁場環境にも影響される。広域の回遊魚であるカツオの漁場形成は海況変動に敏感であるため、漁期中は迅速で正確な海況把握が求められる。近県の試験研究機関や国の研究機関とも連携して、海況情報や漁業情報の収集に努める。また、来遊予測の精度向上については、ニューラルネットワーク以外の手法も含めて検討する。
[研究テーマ](2)三宅島の火山灰を利用した海藻礁の研究
[研究期間]平成14年度〜18年度
[研究の目的]三宅島雄山からの火山噴出物を原料とする試験礁を試作して海域へ投入し、
 有用藻類の着生・繁茂効果を調査検討する。効果が確認できれば、三宅島の噴火災害で
 失われた磯根漁場の回復再生へ海藻礁として活用する。
[評  価] 
 陸上に堆積した火山灰の有効利用を図る一環であると理解できる。三宅島再生に向けた取り組みであり、高く評価できる。磯根回復の可能性について、他の研究あるいは文献などを参考にしてほしい。火山灰自体の悪影響については考慮する必要はないのか。海藻類の着生、繁茂などの観察が主であるが、積極的な種付けなどの方策は試みないのか。テングサの生活史から2年間を1期とし、トータル3年間の取り組みであるが、これでは短いのではないか。
[評価に対する対応]
 火山噴出物には、火山灰からスコリアまでサイズ面でも様々であるが、材料成分や配合割合などについては都立産業技術研究所、海藻礁の効果事例などは東京水産大学と連携して検討する。実施場所については、三宅島への立ち入り規制が解除されるまでは、大島の差木地漁港内をフィールドとして調査を行う。研究期間については、投入後の着生・繁茂状況を見ながら延長も検討する。
[研究テーマ](3)「海洋深層水」の利用に向けた調査 
[研究期間]平成14年〜16年(3年間)
[研究の目的]海洋深層水は未知の魅力を持った「海洋資源」であり、地域経済の活性化や観光産業への寄与が期待できる。東京の島しょ海域は黒潮流域である伊豆諸島から亜熱帯の小笠原まで広範であるが、我が国の海洋深層水取水適地30カ所に該当しており、水質特性を明らかにして、利活用方策を探る。
[評  価]
 海洋深層水の利用については、現在、全国各地で試みられており、一部は成功しているところもあり、都としての新規性を出す必要がある。売りは、何かを明確にしてほしい。産業への貢献度は高いことから、検討会における基本構想策定に期待したい。
 淡水への有効利用、島民の寄与を含めて、さらに、予備的な調査検討が必要であり、他機関との連携を図りながら情報の収集を行ってほしい。 
[評価に対する対応]
 先進県の事例収集や試験計画の前倒し実施などにより、産業労働局内の検討委員会を中心にして、関係機関が連携して早期に利活用の検討をすすめる。調査指導船により大島、八丈島、小笠原海域での試験採水と分析を行って水質特性を明らかにするとともに採取した海水での利活用試験を行う。

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