三宅島噴火災害漁場調査結果(速報)16
調査日:  8月25日(月)〜27日(水)
調査員:   東京都水産試験場大島分場  
           有馬 孝和・安藤 和人・杉野 隆
           滝尾 健二・ 駒沢 一朗・向山 常比古
使用船舶:  三宅島漁協「住吉丸」
概要
三宅島北東部におけるテングサ類の生育状況は、オバクサ・マクサは5月の調査時と同様な状況(草丈が短く、ヌマ付き・ハナツキ・石灰藻付きのものが多い。藻質は細く、硬い)が続いていた。一方、オオブサは波浪の影響を強く受ける波打ち際に生えるためか、葉上の付着物などはほとんど無く、藻質・草丈共に良好であった。
 また、今回サザエを多数確認・採集でき、「アラキ」から「ミノワ」にかけてみられた。サザエは枠取りとランダム採集を合わせると、延べ6地点で合計63個体採集できた。これほど多数採集できたのは3年間の調査で初めてのことである。8/5の試験操業ではトコブシ放流貝が1個体しか採集されなかった「三池」では、ランダム採集の結果、トコブシが合計57個体採集でき、うち放流貝は14個体であった。前回、放流貝が少なかったのは、放流地点と試験操業の場所が若干ずれていたためではないかと思われる。          
調査内容

8月25日(月)
 神津島へ移動。調査機材及び漁協から借用する潜水機材や潜水タンクの確認・調整。

8月26日(火)
@-1アラキ(水深3m付近:透明度3-5mと悪い)
・岸より及び防波堤よりは更に透明度が悪いようす。サザエが良く目につく。
・砂が多く、中小の転石の隙間を埋めているものが多く、枠取りを行う場所を探すのに苦労した。4u枠取り調査(水深3.8m)の結果、トコブシ17個体採集できた。うち天然貝は12個体、放流貝は5個体採集できた。また、今回サザエ天然貝が15個体と多数採集できた。

・テングサ類はオバクサが生えていたが石灰藻の付着が多く、草丈が短い。他にシワヤハズやマタボウ等がみられた。
@-2アラキ(水深7m付近:透明度は10m程度)
・5月の調査と比べ(時期的なものもあるが)、テングサの生息量が減っている印象を受けた。しかし、シワヤハズやアミジグサなどの雑藻は特に増えていないようす。テングサ類(オバクサ)は石灰藻の付着が多く、草丈が短い。
・アントクメが散見されるが、付着部とその周辺部のみが残っている状態。
・投石された板石が多数散在し、板石を反転すると、殆ど全てにトコブシの生息が確認できた。多いところでは、11個体/板石のトコブシが見られた。しかし、トコブシが生息しそうな転石は少なく、トコブシにとって板石が重要な生息場所になっている。サザエは散見される程度。なお、枠取り(水深8.1m)を行った周辺ではサザエの生息は確認できず、岸側の浅い場所の方が生息量が多かった。

A三池桟橋
・水深13.4mのケイソンに定置水温計をステンレス製ハリガネで固定した。詳細は定置水温計設置図参照。

B三池(透明度15m程度)
・マクサが優占し、アラキよりも広い範囲に生えていた。しかし、表面には石灰藻が付着していた。
・トコブシは殻長5-6cm程度のものが主体で採集した34個体中、放流貝は6個体みつかった。大型のトコブシが多くみられ、天然貝の約8割が殻長60mm以上であり、太っていた。
・小型のサザエ(殻高50-60mm)が散見された。

Cオオハシ
・散在する大石の間に30-50cmの中小転石帯が分布していた。
・岩上には土砂や泥の堆積が散見された。岩や石上に泥が堆積していることから、陸上からの影響が続いているものと思われた。
・大岩上にオバクサが生えているものの、表面に石灰藻が付着し、質が悪い。僅かにアントクメを確認できたが、付着部とその周辺部のみのものが多かった。ヒトツマツ・マタボウなどが優占。
・サザエは蝟集してみられず、1-2個体程度の割合で点在してみられた。生息量は「アラキ」の岸側(水深 3m付近)より少なかった。トコブシは3-4個体/石(直径50cm程度)の割合で確認でき、5月の調査時より多数確認できた。

Dカマノシリ(ボウズネ)
・根の上(水深約1-2m)にはハネサイミの大規模な群落が広がり、優占していた。石灰藻が付着したオバクサが広範囲に生えているが草丈短く、質が悪い。岩の切れ目一ヶ所でイセエビを確認した。他に一ヶ所でヒラクサも確認した。ホソバナミノハナも生えていた。オオブサも所々パッチ上に確認できた。
・「ボウズネ」周辺から東側一帯は石灰藻が一面に繁茂し、他の海藻類はほとんどみられなかった。

E砲台
・波打ち際(水深1-2m程度)にはオオブサが群生しており、草丈が長く繁りも良好であった。付着物はほとんどみられない。
・小型のサザエも確認できた。

Fミノワ
・引き続き、水深5-6m以深は一面砂地が広がっていた。
・岩上にはハネサイミが群生し、石灰藻とともに優占している。波打ち際にはオオブサが生えており、砲台よりは草丈が若干短いようであった。しかし、「砲台」と比べ占有面積は「ミノワ」の方が大きい。オバクサは水深1-2m辺りに群生する場所が所々にみられたが、ほぼ全ての表面に石灰藻が付着しており、質が悪かった。
・ 大石の間に中小の転石がみられるが、そのほとんどは埋没しており、トコブシの生息しそうな転石は非常に少なかった。僅かにある転石を反転したが、生息は確認できなかった。イセエビ4個体確認。

G湯の浜漁港
・堤防先端部、水深9.2mに定置水温計を設置した。詳細は定置水温計設置図参照。
・海底には海藻類は少なく、堤防の水面近くにはオバクサやオオブサの生息が確認できた。

8月27日(水)
 ・昨夜からの雨及び波浪が強く海況が悪い。また、翌日以降の天気予報でも回復がみられないため、調査を中止し、一旦大島へ戻ることにする。調査未実施地点及び定置水温計未設置については、後日調整する予定。汽船にて、神津島から大島へ移動。大島分場到着後、テングサ等の測定実施。

その他
 ・予定していた、三宅島北部(ジョウネ)から西部(阿古カマニワ)の調査は海況が悪く、実施できなかった。また翌日以降も天候及び海況の回復が見込めないため、調査日程を変更(短縮)した。
 ・アラキからカマノシリにかけてガスの臭いがした。特に三池からアカバッキョにかけては臭いがきつかった。但し、持参したガス探知機の警報は特に反応しなかった。 


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