東京魚チング

深い海にもキンさん、ギンさん

 海中深くなると水温は下がり、圧力は増す。陽光きらめくのは海面だけで太陽光線は二メ-トルまでしか届かない。これ以深は急速に暗黒の世界となる。プランクトンや魚介類による生物発光(せいぶつはっこう) があるので全く光が無いわけではないが極端に乏しい。暗くては餌も見にくいだろう。こんな所が住みやすいかどうかは、深海の住魚( 人) 達に聞いてみなければわからない。真赤な体に大きな金色の眼を持つキンメダイは数百メ-トルの深海に住む。八丈島周辺にも良い漁場があって、冬が旬で美味い。深海の魚達は乏しい光を最大限に集めようとした結果、眼が良く発達したグル−プと逆に視覚以外の感覚に頼ろうとした結果、眼が退化したチョウチンアンコウなどのグル−プがある。眼が良く発達したグル−プにはキンメダイの他にギンメダイ、ハダカイワシ、そしてキントキダイなどがいる。これらの魚が薄明かりを感じることができるのは眼球の奥にあるタペ−タムという微小なグアニン結晶板群による。大きな眼で集めた薄明かりは網膜(もうまく)の光受容細胞に到達する。ここを通る光をタペ−タムに反射させれば、同じ光をもう一度感じることができる。実は、闇夜にネコの眼がライトに照らされて妖しく輝くのも同じ原理である。キンメダイの眼が金色に輝くのは瞳孔(どうこう)周囲の虹彩(こうさい)が金色だからである。ところで、キンメダイと同じ水深に住むギンメダイをご存じだろうか知名度が低く、お分かりの方はよほどの魚通であろう。こちらは虹彩が銀色のため眼は銀白色に輝く。キンメダイほど美味くはないし、体色も黒く、お世辞にも美魚(人)とは言えない。あごヒゲ二本での触覚も深海生活に活用しているのであろう。キンメやギンメ、キントキダイの仲間は今から1億年も前に出現し、暗い深海の生活に適応進化してきた。永い間の進化の努力に意を表して、さしずめ「深海のキンさん、ギンさん」といったところか。mu
ギンメダイ写真
写真・ギンメダイ

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