東京魚チング

さわらぬゴンズイにたたりなし

 顔つき、体つきから海のハモやアナゴは川のウナギに似ているし、ゴンズイは沼のナマズに似ている。それもそのはずで、魚類学上、ハモやアナゴはウナギ目(もく)の魚だし、ゴンズイはナマズ目(もく)に属する。伊豆諸島では、ゴンズリとかギギ、八丈島ではオチョボガヒデと呼ばれるゴンズイは群れて生活している。特に、体長数センチ程度の幼魚のときには、「押しくらまんじゅう」よろしく、昼も夜もわっさわっさと群れて「ゴンズイ玉」を作って泳ぎ回っている。水槽中で見ると黒っぽい体に黄色のペンシルストライプが走っており、可愛らしい8本のひげや口を半分開いて、いつも忙しそうに方向転換しながら皆が同じ向きで群れている。不思議なことに二つのゴンズイ玉を混ぜて1つの水槽に入れても、必ず元の1つの「玉」に戻る。仲間同士の「臭い」、つまり集合フェロモンと呼ばれる物質を体から発散して仲間から離れないようにしている。成長すると体長30センチ位になるが、夜行性が強くなり、今度は群れを作りたがらなくなる。つまり、小さいときには群れを作って、大きく見せ、より強い敵から身を守っているのだろう。もう一つゴンズイには強い武器がある。それは背鰭に一本、左右の胸鰭に各一本の合計3本の毒腺を持つ棘(きょく )を持っていることである。毒のランクから言えばオニオコゼが横綱、ミノカサゴが大関ならば、ゴンズイは関脇位だが、それでも、刺されると一晩中苦しむぐらい猛烈に痛い。さらに、最近の研究でゴンズイの体表粘液、つまりヌメリにも毒のあることが判った。棘とヌメリ、いずれの毒も蛋白質であることは確かだが、詳しい化学構造はまだ不明である。刺された場合には傷口に棘の毒と一緒に体表粘液の毒も混入するが、刺されない場合でも指や手に傷口のある場合は、ゴンズイには素手で触らぬほうがよい。夏の夜釣りで、あわててこの魚をつかむと長い苦しい夜を過ごさねばならなくなるので、御注意。さわらぬゴンズイにたたりなし、か? mu

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