東京魚チング

ウキブクロの秘密

 スキュ−バダイビングでは、潜水病にならない目安として自分の吐く気泡より早く浮上してはならない。魚でも、ハタやムツは深場から急に釣り上げられると腹部が膨らんで海面にプカリと浮かんでしまう。これは、深海の水圧から海面への急な減圧に鰾(うきぶくろ)の圧力調節が間に合わず、腹部が膨張するためで、この無様( ぶざま) な状態を「浮き鯛」と称し、極端な場合には胃や腸が反転して口から飛びだしてしまう。なぜ、魚に鰾があるのだろう。第一は浮力( ふりょく) 調節である。魚も水より比重が大きいので水中で浮かび、自由に遊泳・移動するには、水中重量をゼロにする必要がある。このため、鰾内のガスを出し入れして体の比重を調節する。第二はニベやイシモチのように鰾の周囲の筋肉により振動・発音し、コミュニケ−ションの手段とする。第三はコイのように内耳と連絡し、聴覚の補助をする。とっておきの秘密は、原始の頃、硬骨魚類の先祖が水辺や湿地に住み、湿った空気を呼吸するため、鰾が肺として役立っていたことである。今でも、空気呼吸できる鰾を持つ肺魚がいる。しかし、鰾はどんな魚にもあるわけではない。一部の硬骨魚や軟骨魚類には鰾が無い。サメやエイは最初から海中生活者として出現し、進化の過程で空気呼吸の必要や機会が無かったと考えられる。代わりに、鰭で浮揚力を生み出したり、肝臓に比重の軽い脂肪を貯める。鰾を持つ魚の発生初期には、すべての鰾が気管で消化管と連絡している。ニシンやサケのように、一生涯、この気管を持ち消化管を経て外界と連絡する魚を開鰾魚という。一方マダイでは、ふ化後2 〜3 日で気管が開いて最初の空気を飲み込むが10〜12日には閉じる。これらは閉鰾魚といって、タラやスズキもそうである。ところで、キンメダイ等では深場から釣られても「浮き鯛」にはならない。日夜、餌取りのために深・浅場間の移動を繰り返すため、急な圧力変化にも慣れているせいであろう。それ故、このような魚では、再び海に戻しても生残りが期待できる。資源保護の立場で、釣りあげてしまった幼魚の再放流を是非、実行したいものだ。 mu
キンメダイ写真
写真・キンメダイ

ack

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