第55号 平成11年 7月29日
〒 198-0105  東京都西多摩郡奥多摩町小丹波720
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持続的養殖生産確保法が成立!
 本年5月21日に「持続的養殖生産確保法」が公布・施行されました。この法律が施行されたのは、近年、過密養殖や過剰な餌料の投与等により養殖環境が悪化し、そのことがまた、養殖水産動物の伝典性疾病(魚涌)の発生・蔓延の原因となっているためです。そのため、養殖漁場の改善を図っていくとともに、魚病の蔓延防止措置を講じていくことが今後とも養殖生産を確保するためには必要となってきたからです。
 本法律は1.養殖漁場環境の悪化防止・改善計画の策定と2.特定疾病等の蔓延防止の2本の柱からなりたっています。
 1.の養殖漁場環境の悪化防止については区画漁業権を有する漁業が対象なので都内の鱒類やアユ等の養殖にかかわるものではありません。他方、2.は水産庁が定めた特定疾病(下表)が国内で発生した場合、この疾病に感染した魚の移動制限・禁止、焼却処分の命令や養殖業者への疾病検査のための立ち入り検査等の強制力と罰則を持つものです。
 なお、この法律では焼却処分の対象となった養殖魚については一定の算定方式に基づいてある程度の保証がされます。またこの2.に関しては本年11月を目逸に施行される予定となっています。
特定疾病(我が国に未定着の魚病)
魚種名 疾病の名称
コイ コイ春ウイルス血症
サケ科魚類 ウイルス性出血性敗血症
流行性造血器開壊死症
ピシリケッチア症
レッドマウス症
クルマエビ属
のえび類
バキュロウイルス・ペナエイによる感染症
モノドン型バキュロウイルスによる感染症
イエローヘッド病
伝染性皮下造血器壊死症
≪サケ科魚類の魚病解説(5)≫せっそう病
【病名】せっそう病  【病原体分類】細菌
【病原体】Aeromonas salmonicida(エロモナス サルモニサイダ)
 本魚病は19世紀末にヨーロッパで発見され、サケ科魚類では最も古くから知られている細歯性疾病です。日本には1929年に長野県で報告されたのが最初で、アメリカからのニジマス卵に伴って侵人したと考えられています。
 当時は本病に対して抵抗性の強いニジマスが養殖の主体であったため、被害は余り問題にはなりませんでしたが、アマゴ、ヤマメ、ヒメマス等の在来マスの養殖が盛んになるに従って、本病が多発するようになりました。これらのマス類の養殖は本病との戦いと言っても過言ではありません。
 東京都では1953年頃からニジマスに発生した記録があります。本病ほサケ科魚類全般に発生しますが、魚種によって被害が異なり、都内ではヤマメ、イワナに多発します。症状は様々で、外部症状が現れず急に死ぬ「急性型」、体側に膨隆患部の「せっそう」が形成される「亜急性型」、腸炎と鰭基部の出血が見られる程度で死亡が長期にわたる「慢性型」、病原菌が分離されても死に至らない「潜伏型」のタイプに区別されます。稚魚や幼魚では急性型が、高齢魚ほど亜急性、慢性型が多く、水温5℃以下ではほとんど見られません。春から秋の水温が高くなる季節に発生し、水温10〜15℃で流行します。本病に対しては認可された治療薬が販売され、早期に発見し投薬を行えば完治します。ただし、薬剤に対する耐性菌の出現も問題になっていますので、魚病検査機関による診断
と薬剤感受性試験結果から適切な抗菌剤を選択することが重要です。全国養鱒協議会の疾癌実態調査では平成9年度の全国診断件数1,156件のうち本病は223件、都内では12件でした。
アユ解禁日調査結果
 梅雨が明け、鮎釣りの季節となりました。秋川では6月13日、多摩川(羽村水道取水堰〜奥多摩湖)では6月27日にアユ友釣り漁が解禁になりました。
 このうち6月27日の解禁日に、例年のように奥多摩町の古里友釣研究会の協力により釣獲物を測定しましたので、その結果を簡単に報告します。
 解禁日は雨模様で濁りもあり、友釣りには条件があまり良くありませんでした。参加者のなかから協力して頂いた10人の釣獲尾数は1人当たり最大で38尾、最小1尾、平均で9.5尾でした。
 アユの大きさは全長12.0〜23.4cm、平均で16.9cm、体重12.9〜80.4g、平均39.9gでした。
 昨年の釣獲尾数は平均5.7尾、全長は17.1cm、体重は42.1gでしたので、釣獲尾数は約2倍、全長・体重はほぼ同じということになります。
 これを過去4年間のデータと比較すると、平均釣獲尾数でやや少なく、平均全長でほぼ平均値と同じとなります。
 なお、奥多摩漁協による解禁日前の「試し釣り」が6月18日に行われ、奥多摩町川井の「ダム下」の釣獲魚のなかに腹鰭切除の標識魚が1尾ありました。この魚は5月8日、奥多摩橋「竹の下」で放流した琵琶湖産アユを親とする人工種苗の3,989尾のうちの1尾です。この標識魚は奥多摩町の「竹の下」で放流された後、40日後までに約8km遡上していたことになります。

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