奥多摩分場ニュース
第67号 平成13年7月16日
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多摩川における「カワウ」飛来数調査結果について
 秋川は6月11日、奥多摩は6月24日に鮎友釣りが解禁となり川辺では釣り人の姿が見られる季節となりました。アユは「冷水病」や「カワウ」による食害等が近年日本全国で問題となっております。
 特に1990年頃から急激に数が増えてきたと言われる「カワウ」は一日に300〜400gの魚を食べるといわれており、この量は放流サイズ(10〜15g)のアユ30〜40尾分になります。そのため、この食害の実態を把握するため、東京都の水産課が平成11〜12年に多摩川のカワウ飛来数を調査し、その結果を今年の農林水産技術成果発表会で報告しましたので、その概要を紹介します。
●方法
 多摩川、秋川流域に飛来するカワウの目視観察を行い、カワウ調査マニュアルに従って、飛来方向、時間、数、捕食状況等を記録しました。
調査風景1
図1.調査風景
調査風景2
図2.調査風景
1.調査期間:平成11年10月〜12年10月に月1回(日の出30分前から約2時間)実施。
2.調査地区:多摩川、秋川の中〜上流域に6定点。
3.調査員:奥多摩、多摩川、秋川の各漁協組合員及び水産課職員
調査地点図
図3.調査地点
●結果
1.飛来してくる方向は、すべての定点で下流からが多く、合計で下流からが3,193羽(81.1%)、上流からが742羽(18.9%)でした。最も河口に近い是政橋は1,527羽(38.0%)と下流からの飛来が最大でした。また、飛来数も是政橋が最大で、中間の2定点で減少、上流2定点で再び増加しました。
方向別飛来数
図4.方向別飛来数
2.飛来するコースは、川沿いに上り、下りをする他に、別の場所を中継しての移動もあるようで、近郊の営巣地(ねぐら)との関わりが想像されました。
3.月別の飛来数は12月が最も多く、下流から670羽(17.0%)、上流から193羽(4.9%)でした。飛来数が少ないと予想された夏期(6〜8月)にも、それぞれ223羽(5.7%)、241羽(6.1%)、153羽(3.9%)を記録する等、年間を通しての飛来が確認されました。
月別飛来数
図5.月別飛来数
4.飛来する時間帯は、日の出30〜60分後までが多く、以後は減少しました。
時間別飛来数
図6.時間別飛来数
5.調査時間内に川に着水したカワウは、下流から397羽、上流から94羽、計491羽(12.5%)であり、そのほとんどは潜水行動をしました。追いかけられ、捕食を免れた魚類も、損傷を受け、その場でサギ等に補食されるなど二次的な食害も多く見られました。

●今後の課題として「現在、秋川漁協では、国土交通省、日本野鳥の会、水産課と共同で、防除テープ等による効果調査を進めています。カワウを捕獲せずに食害を減らす具体策を検討し、広域的取組みによる個体数管理の体制づくりが必要です。」と結んでいます。

 上記調査で確認された飛来数延べ3,935羽が1日に1羽当たり300〜400gの魚を食べるとすると、それだけでも1,180〜1,574kgとなります。これは月1回の調査で確認された飛来数なので、食害全体の数量は莫大なものと想像されます。
カワウの紹介
標準和名:カワウPhalacrocorax carbo
ペリカン目ウ科:ウ科には他にヒメウ、ウミウがいる。
大きさ:全長約80cm、体重約1.5〜2.5kg
摂食量:約300〜400g/日
繁殖期:関東では冬から春
その他:鵜飼いに用いるのはウミウ、関東地域のカワウは、夏を中心とした7〜8ケ月間は東京湾の河口から遠浅の沿岸一帯、冬を中心とした4〜5ヶ月間は周辺河川中下流部が主採食場といわれる。
カワウ
お詫びと訂正
 前号「奥多摩分場だより第66号」においてヤマメ発眼卵85,000万粒は85,000粒の誤りました。お詫びして訂正いたします。

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